昨年度在外研究で滞在したチューリッヒ大学歴史学部では学期中、月に1回ほどGeschichtskontorという「歴史を書く」ことを目的としたセミナーが開催されていました。そこでは、歴史学部の教員・研究員・院生が事前に読んできた論文について90分ほど意見交換をします。ルールは、学部のメンバーによって書かれた出版前の論文を読む、セミナー中は院生を優先して議論を進める、自分が話したい言語を使う(参加者の誰かが訳す)です。つまり、身分や専門分野に関係なく、私も滞在期間中に日本帝国と糖業に関する執筆中の論文を読んでもらいました。ドイツのテン菜糖に関するコメントや経済史の視点から質問をもらうことができ、自分が守備範囲とする分野以外からの意見がとても刺激的でした。その後、書くことのモチベーションも一気に上がり、同じようなセミナーを上智で開催したいと思うようになりました。
そして、昨日(2019年4月26日)。上智大学版Geschichtskontor(こちらではWriting Seminarsと呼んでいます)を開催しました。幸運なことに、チューリッヒ大学での受け入れ教員であったDusiberre先生がいらっしゃったので、初回のセミナーの司会進行役をお願いしました。そして、今回の論文提供者はフルブライトで日本にいらしているKurashige先生(南カリフォルニア大学)という豪華な顔ぶれでした。院生からの積極的な質問・コメントがあり、75分という時間があっという間に終わってしまいました。中でも興味深かったのは、Kurashige先生が今回の論文を書くにあたって経験した迷いや試行錯誤の道のりが、質疑応答の中で読み取れたことです。また、このように個人的な経験を聞くことで、テキストの中に隠れていた重要なポイントが見えてきたような気がします。完成版ではない論文を執筆者とともに語り合うことーありそうでなかなかない機会。できるだけ長く続けられるように頑張っていきたいです。
Writing Seminarsの情報:https://marikosiijima.